《特集》心を育む やさしさ育む動物との暮らし

今ご自宅で動物を飼っていますか? まだ子どもが小さいので飼いたくても飼えないというケースも多いはず。幼少期の子どもを持つ家庭にとって動物と一緒に暮らすことが、さまざまないい効果をもたらします。動物によるセラピーなどを行う専門家・青木健さんにお話しを聞きました。

動物を通じて共感

子どもの世話と家事で手がいっぱい…というパパママたちにとって「動物と暮らす」ことは、「もう一つ世話するものが増え、大変そう」と思われがち。事前のアンケート(左下表)でも、「世話をする時間がない」という声が多く寄せられました。
アニマルセラピーの普及や研究に長年携わってきた青木健さんは「そんな働き世帯こそ動物との暮らしが大切」と力説。その理由は、「ママのストレス緩和」と「動物を通じた共感とやさしさを育むこと」にあると話します。
核家族化が進み、いわゆる「ワンオペ育児」でヘトヘトな人も多いのでは。「ペットを飼うことで、子どもの目線や注意が動物に向き、ママの精神的なストレスが緩和されることが多くあります。また3〜6歳ごろの子どもは人間らしくなる過渡期。その期間に〝やさしく接することの大切さ〞を経験しなければ、大人になっても人にやさしく接することができないといわれています。子どもは動物を見て、小さくて弱いものだから守らなければならないという使命感、優しさが芽生えます。家庭で動物の世話を一緒にすることで、子どもにとっても親にとってもやさしくなれる時間ができるはずです」と青木さん。

命の大切さを知る

ヨーロッパ諸国では、子どもが生まれると共に犬を飼う習慣があります。子どもが12~18歳になる頃に犬は老犬になり、数年後には天国へ旅立ってしまいます。愛犬の死という悲しさの経験、命の尊さを学ぶ場なのです。
日本では、「命を大切にしなさい」と教えられるものの、実際は管理の面でさまざまな問題が起こることから、家庭や学校の敷地内での飼育が減少しています。「ご自身が子どもの頃、動物を飼育した経験はありませんか?そういう機会があったから、動物は命あるもので、死は悲しい、死後見送ってあげることの大切さも理解できているはずです」
動物(ペット)を飼わない理由の一つに、「飼っていたペットが死んだ時にとても悲しい思いをした、子どもに辛い思いをさせたくない」という人もいます。辛い経験ですが、親として子どもに伝えなければならないことでもあります。命の大切さを学ぶ機会としても動物との暮らしは大切なことなのです。
「飼うなら犬がお勧め」と青木さん。上にポイントをまとめましたので、チェックしてくださいね。

 

喜びや感情を理解できる 犬 家族みんなにとってイイこと

世界で400 種ほどいるといわれる犬は、もともと人間の作業を助けるために進化した動物といわれています。「人間とアイコンタクトができ、感情を感じ取れる犬を飼うことはお勧めしたい」と青木さん。それぞれにとってどんないいことがあるかポイントを紹介します。

 

精神的な癒し効果も

アニマルセラピーは、動物と触れ合うことでストレスを軽減させたり、自信を持てるようになるなど精神的な回復が期待されています。医療や介護の現場でも取り入れられ、家庭でペットを飼うこともアニマルセラピーの一つ。癒し、学び、いろいろな相乗効果が期待できますよ。

最初は小動物から

前ページで「飼うなら犬」とお勧めしましたが、賃貸住宅に住んでいたり、アレルギーがあったりで現実には犬を飼えない人も多いはず。そんな環境でも飼いやすく、子どもでも世話しやすい動物を紹介します。
男の子がいる家庭なら、【金魚】【ハムスター】、女の子なら【手乗りインコ】。これらの共通点は室内で飼育ができる小型動物で、散歩の必要がなく、手入れが楽なこと。これら以外に【カメ】なども、アレルギーがあっても飼えて扱いやすいという点ではお勧めだそうです。

男女で違う関わり方

「親が世話をする様子を見て覚えて、世話を始めるのは自分の意思でやりたいと言った時。任せるつもりでバトンタッチする、これが男の子の場合。女の子はやり方を少しずつ教わりながら徐々にバトンタッチしてできることを増やしていく。
コツコツタイプです」と青木さん。男の子と女の子ではペットとの関わり方に差があります。
インコのえさやりは、お母さんが赤ちゃんにおっぱいをあげる行為に非常に似ていることから女の子向きだそう。性格による差ももちろんあるのでこの限りではありませんが、参考にしてみましょう。
動物が家庭にいることで、家族みんなの心が豊かに。パパとママにとっては、世話を共有することで子どもの成長に気づき、安心感にもつながります。一度は家族で動物を飼うということを話し合ってみませんか。

 

子どもがお世話できる小動物たち

インコ(小型のもの)

赤ちゃんのインコのえさやりは、女の子の場合、この行為により母性が目覚めるきっかけになります。日中も誰かが自宅にいられるような、春休みや夏休みから飼い始めるのをお勧めします。

金魚

金魚は嗅覚に優れ、えさを指でつまんで水槽に入れると、えさをくれる人を見分けます。毎日えさをくれる人がそばによってくると金魚が近寄ってくるようになります。

モルモット(ハムスター)

ヨーロッパには、子どもに命の大切さを教えるための、モルモットの飼育プログラムを推奨している国があるほど。性格が大人しく、手入れも簡単です。ママは野菜を切り、子どもはエサやり、パパはゲージの掃除など役割分担をして飼育してみましょう。

 

 


●青木 健さん

中部アニマルセラピー協会代表理事
名古屋経営短期大学講師
名古屋コミュニケーションアート専門学校 講師

障害者施設や高齢者施設、児童養護施設などで、動物と触れ合う機会をつくり、動物が本来もっている「笑顔や優しい心を引き出す力」によるケア「アニマルセラピー」活動をはじめ、動物に関する幅広い活動を行っている。

●問い合わせ/千種区・ペットタウン
TEL 052-725-5678